ここでは、キッチン、洋食器などでお馴染のステンレス鋼
(以下‘ステンレス’)について簡単にまとめてみました。
| ステンレスとは・・・? | ステンレスの種類 |
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1.ステンレスとは・・・?
鉄を主成分として、これにクロムやニッケルを含有させた合金です。
一般的には、クロムを約11%以上含有させた鋼をステンレスと定義されています。
これはクロムが約11%以上になると、さびにくさ(耐食性)が飛躍的に向上する性質から来ています。
ステンレスとは、‘Stainless Steel’の略称で、‘Stainless’はさびにくい、そして‘Steel’は鋼のことです。
すなわちステンレスとは直訳すると、‘さびにくい鋼’ということになり、‘さびない鋼’では決してありません。
この‘さびにくい’という素晴らしい特性を保つヒントを、‘ステンレス鋼の耐食性’の項にまとめましたので、あわせてご参照下さい。
2.ステンレスの種類
2−1 マルテンサイト系ステンレス
マルテンサイト系ステンレスは一般の鋼と同様に、熱処理(焼入れ・焼戻し)により高強度、高硬度などの優れた機械的特性が得られる性質をもちます。さらに常温で磁性を有しています。
但し他の系統のステンレス(後述)にくらべ、耐食性の面では劣ります(C含有量が高い為)。
| 鋼 種 | 概略組成 | 性質・用途 |
| SUS410 | 13Cr | 良好な耐食性と機械加工性をもちます。刃物類。 |
| SUS420J2 | 13Cr−0.3C | 焼入れ後の硬さが高い鋼種です。刃物、直尺など。 |
2−2 フェライト系ステンレス
フェライト系ステンレスは殆どの鋼種が16%以上のクロムを含有し、安定したフェライト相を形成していますので、熱処理しても硬化する性質をもちません。一方耐食性・耐熱性の面では、マルテンサイト系ステンレスよりも優れた特性を有します。さらに常温で磁性を有しています。
| 鋼 種 | 概略組成 | 性質・用途 |
| SUS430 | 18Cr | 耐食性の優れた汎用鋼種です。器物、家電部品など。 |
2−3 オーステナイト系ステンレス
オーステナイト系ステンレスは一般に‘18−8(18Cr−8Niに代表される)’ステンレスとも呼ばれています。
冷間加工だけで硬化し、熱処理では硬化しないで軟化する、いわゆるオーステナイト組織を形成しています。
フェライト系ステンレスに比べ、機械的性質、溶接性などに優れているので、多くの用途に用いられています。このため多くのステンレスメーカーで、様々な鋼種の開発が進められています。
| 鋼 種 | 概略組成 | 性質・用途 |
| SUS301 | 17Cr−7Ni | 冷間加工により高強度を得られます。 但し耐食性はSUS304よりやや劣りますが、実用上は同等です。 各種ばね部品に広く使われております。 |
| SUS304 | 18Cr−8Ni | ステンレス全体の中で最もポピュラーな鋼種です。 家庭用品から原子力まで幅広く使われています。 冷間加工により硬化しやすい性質を使うことで、ばね用材料としても広く使われます。 |
| SUS304L | 18Cr−9Ni −低C |
低炭素のため、耐粒界腐食性に優れています。 また高ニッケルのため、深絞り性にも優れています。 深絞り成形加工品、ヘラ絞り成形加工品など。 |
| SUS305 | 18Cr−10Ni | 高ニッケルのため加工硬化が低く、絞り加工性に優れています(但し張り出し加工性については劣ります)。 高ニッケルにすることで、非磁性の性質を有していきます。 医療器具、電子銃部品など。 |
| SUS310S | 25Cr−20Ni | 耐熱性、耐食性に大変優れています。 燃焼装置部品、ボイラー、航空機部品など。 |
| SUS316L | 18Cr−12Ni −2Mo −低C |
Mo添加による優れた耐食性と、低Cによる耐粒界腐食性を有しています。 溶接後熱処理が困難な加工部品など。 |
2−4 析出硬化系ステンレス
冷間圧延後析出硬化熱処理により、マルテンサイト地に微細なAlを含む金属間化合物を生じさせ、非常に高い硬度の得られるステンレスです(析出硬化熱処理CH900:480℃×1時間保持後、空冷)。
但しオーステナイト系ステンレスと比べ、耐食性がやや劣ります。
| 鋼 種 | 概略組成 | 性質・用途 |
| SUS631 | 17Cr−7Ni -1Al |
Alの添加で析出硬化性をもたせております。 各種ばね部品。 |
OA・AV関連などのばね用ステンレス製パーツ −写真提供:高砂鐵工株式会社−
3.ステンレスの耐食性
−資料提供:高砂鐵工株式会社殿−
ステンレスは耐食性に優れた鋼でありますが、その使用する条件や環境によって耐食性にかなりの相違が生じたり、局部的な腐食で不都合が生じ使用不可能となる場合があります。
ここではこれらの原因、ならびに使用上の留意点について簡単に触れます。
3−1 粒界腐食
<現象>
粒界腐食は主にオーステナイト系ステンレスにみられ、焼鈍温度より冷却する場合、必要な冷却速度が得られない場合や、急冷したものを500〜800℃程度の温度範囲に再加熱すると結晶粒界にそって著しく腐食されやすくなる現象をいいます。
特に溶接を行ったときは溶融部のすぐそばにこの温度範囲の部分を生じ、粒界腐食が起こりやすくなります。
<原因>
Crの炭化物Cr23C6が結晶粒界に析出し、この付近のCrの濃度が減少する為、激しい腐食が起こるとされています。
<対策>
通常用いられている方法は、約1,100℃に再加熱して析出している炭化物をオーステナイト中に溶解し、急冷することであります。
2つ目の方法は、有害な炭化物が析出しない程度まで、C含有量の低い鋼種を用いることであります。
具体的にはSUS304L,SUS316Lなどを使用することです。
3つ目の方法は、Ti、NbのようなCとより安定した化合物をあえてつくり、しかもこれが粒界には析出しにくい鋼種を用いることであります。
具体的にはSUS321(18Cr−9Ni−Ti)あるいはSUS347(18Cr−9Ni−Nb)を使用することです。
なおフェライト系ステンレスにおいても、925℃以上から急冷すると粒界腐食に対し、鋭敏になるとされていますが、この理由は明らかになっておりません。
その防止策として、655〜815℃に短時間加熱することが有効とされています。
3−2 応力腐食
引張り応力を受けている材料が特殊な腐食環境にある時に起こる腐食です。
フェライト系ステンレスでは一般に起こりにくく、オーステナイト系ステンレスの場合は引張り応力、ハロゲンイオンの存在、温度などの条件で腐食の状況が左右されます。
同じ応力でも圧縮応力は腐食を起こす原因とはならないので、たとえば曲げられた管の外側の、引張り応力を受けている部分にだけ割れが発生いたします。
最小付加応力ははっきりせず、数10N/平方ミリ の応力で割れが発生した報告もあります。ハロゲンイオンとしては工業的に一番問題となるのはCl ̄であって、CaCl2、MgCl2
として存在している方が、NaCl、FaCl3 の時より点食を起こしやすく、量として数ppmで腐食の原因となった例もあります。温度は50℃以下ではめったに起こらず、90℃付近で甚だしくなります。
応力腐食防止策としては、上述の条件を避けることと、Ni含有量の多い鋼種を選ぶことが有効です。
3−3 点食(孔食)
ステンレスの場合もっとも一般的にみられるのが、この点食であります。
発生のメカニズムは、不動態皮膜が破壊され、その部分が局部電池の陽極となり陰極との面積の比が大きいことと、孔中に酸素が不足していることとあいまって、腐食が深くなっていきます。
点食の生ずる因子の第一として、ハロゲンイオンの存在、実際にはCl ̄の存在があげられます。次に酸化剤の不足や液の酸性度、液の停滞、鋼表面の不均一などがあげられます。
点食防止策としては、表面を清潔にしてCl ̄が存在しないようにする、液のpHを高める、液を流動させる、あるいはSUS316などのMoを含有した鋼種を用いるなどの方法があります。
3−4 大気環境中の腐食
ステンレスは清浄な大気中では一般的にさびが生じないで長くその光沢を保ち、オーステナイト系ステンレスで屋外に10数年間放置しても変化がなかったとの報告があります。
しかし実際にはその他の系統、とくに13Cr鋼ではしばしば発錆の事例がみられます。
これらの原因の一つとしては、‘ガス’の影響があります。都市、とくに工業地帯では亜硫酸ガスが発錆の原因となり、塩化水素ガスや硫酸のガスが含まれている時はさらに影響は大きくなります。
しかし、これらのガスも湿気の少ないところでは害は少ないので、材料の表面に付着して湿気をよぶ原因になる塵埃や汚れの存在は、重要な因子になります。従って表面は常に清潔に保つ必要があります。
3−6 食塩(NaCl)による腐食
前述した応力腐食や点食の場合、Cl ̄がその重要な因子となっておりますので、NaClの存在は好ましくありません。
しかしステンレスの実際の使用上には、汗や水の中に自然に溶けているNaClや食品、また海岸地方では海水の飛沫によりNaClが付着する可能性が高く、塩水中ではpHが3以下の時に全面腐食が起こり、3以上では点食が生じ易いので、実際はNaClによる腐食は点食として現れる場合が多くあります。
NaClに対する耐食性はCrやMo含有量の高いものほどよいといえます。
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